
こんにちは。ゆず療育セラピスト塾 主宰の西村猛(PT)です。
今回は、令和8年(2026年)および令和9年(2027年)に予定されている障害福祉分野の制度改正が、療育セラピストにどのような影響を与えるのかについて、現時点で見えている政策の方向性と、現場の状況を踏まえながら、若干の知見を交えてご紹介します。
制度改正というと、「経営者や管理者の話」「現場で働くセラピストには直接関係ない話」と感じられることも少なくありません。
しかし今回の改正は、報酬体系や事業所運営の見直しにとどまらず、セラピストの働き方や評価のされ方そのものに影響する内容を含んでいます。
とくに療育領域では、「どのような人材が、どのような役割で支援に関わっているのか」が、これまで以上に問われる局面に入ろうとしています。
制度改正の全体像|まず押さえておきたいポイント
今回の制度改正は、2段階で進められる予定です。
- 令和8年(2026年)臨時報酬改定
→ 新規参入を抑えるためのブレーキ的改定 - 令和9年(2027年)定例報酬改定
→ 支援の質・人材・生産性を軸にした本格的な見直し
背景にあるのは、障害福祉費用の急激な増加と、事業所数の拡大です。
「量は増えたが、それよりも中身はどうなのか」という視点が、国や自治体の中でより強くなっています。
その結果、今後はとりあえず療育を行っていればOK、ではなく、「どんな支援を、誰が担っているのか」が重視される流れになっています。
療育セラピストにとっての影響①
人材不足が、より明確な「価値」になる
療育分野は、もともと慢性的な人材不足の状態にあります。今回の改正により、
- 新規事業所の報酬が引き下げられる
- 採用環境がさらに厳しくなる
- 人員欠如による減算リスクが高まる
といった状況が想定されています。
これは裏を返せば、セラピストがいなければ、事業所は運営できないという現実が、これまで以上に表面化するということでもあります。
結果として、
- セラピストの市場価値が高まる
- 働き方や条件について交渉しやすくなる
- 「支援の中心を担う人材」として位置づけられやすくなる
といった影響が、徐々に広がっていくと考えられます。
療育セラピストにとっての影響②
処遇改善と専門性の関係が、より強くなる
処遇改善加算はこれまでも、賃金改善という形で一定の効果を上げてきました。
今後は、加算率の引き上げ、対象職種の拡大、直接支援に関わる人材の重視、といった方向性が、より明確になる可能性があります。
療育セラピストは、直接支援に関われる、支援の根拠を説明できる、保護者や多職種と連携できるという点で、処遇改善の対象として評価されやすい立場にあります。
単に「配置されている」だけでなく、どのような役割を担い、どんな価値を提供しているのかが、これまで以上に問われるようになるでしょう。
療育セラピストにとっての影響③
「専門性」が評価される一方で、負担も増えやすい
令和9年の定例改定では、
- 強度行動障害への対応
- 被虐待児への支援
- より高度で個別性の高い支援
といった分野が、評価の対象として注目されています。
これらは、セラピストの評価・分析・プログラムの立案力が強く求められる領域です。
一方で、
- 書類業務の増加
- ICT導入への対応
- 役割の拡大・曖昧化
といった負担が、現場のセラピストに集中しやすくなる側面もあります。
「専門職だから」「分かっているから」という理由で、支援以外の業務まで抱え込む状態が続くと、消耗や離職につながるリスクも高まります。
これからの制度下で、セラピストに求められる視点
今回の制度改正を踏まえると、療育セラピストには次のような視点が重要になってきます。
- 支援を行うだけでなく、その意図や評価を言語化できること
- ICTや業務改善を「質の向上に時間を割くことができるための手段」として捉えること
- 自分はどのような専門性を軸に関わりたいのかを整理しておくこと
制度は強制的に変わっていきますが、その中でどんな立ち位置を取るか、どのように行動するかは、セラピストに委ねられています。
おわりに|制度改正は、分かれ道
令和8年・9年の制度改正は、療育セラピストにとって大きな転換点となる可能性があります。
専門性を意識し、自身の役割を整理しながら関わる人は、より評価され、必要とされる存在になっていくでしょう。
一方で、何となく現場に翻弄され、すべてを抱え込むような働き方は、気づかないうちに負担を増やしてしまうかもしれません。
制度が変わる今だからこそ、「自分は、どんなセラピストとして療育に関わりたいのか」一度立ち止まって考えてみることが、大切な時期に来ているように思います。

