
こんにちは。主宰の西村猛です。
「評価結果を丁寧に説明したのに、保護者の反応がいまひとつ…」
「理論的には正しいことを話しているはずなのに、どこか噛み合わない…」
療育の現場で働くと、そんな伝わらなさにモヤモヤする場面は少なくないと思います。
今回、私が運営するYouTubeチャンネル「療育支援者の学校」で、下記の動画を公開しました。
【保護者支援のコツ】療育方針、ちゃんと伝わっていますか?〜保護者が納得しやすい伝え方のコツ〜
この動画では、保護者が納得しやすい療育方針の伝え方について、現場経験をもとにお話ししました。
この記事では、その内容を整理しながら、PT・OT・STの皆さんが「明日からの支援」で実践できる形に落とし込んで解説していきます。
なぜ療育方針は「伝わりにくい」のか
最初に押さえておきたいのは、支援者と保護者の視点のズレです。
これは決してどちらが悪いという話ではなく、「みている部分が違う」という前提の話です。
| 支援者の視点 | 保護者の視点 |
|---|---|
| 発達段階、将来の自立 | 今日・明日の困りごと |
| 長期的な支援計画 | 目の前の大変さや不安 |
| 専門的な知識・分析 | 感情、安心、孤独感 |
支援者はどうしても「理論」「長期的な見通し」「発達段階」などを語りがちです。
一方で、保護者の方は「今日どう過ごすか」「明日どうなるのか」など毎日の暮らしにおける課題が気になっています。
そのため、保護者の日常に感じている感覚(感情)を抜きに話を進めても、納得感は生まれにくいのです。
まずは「保護者が伝えたいこと・伝えようとしていること」を意識することが、こちらが伝える前の第一歩になります。
「納得されにくい伝え方」3パターンと改善のヒント
① 専門用語を多用してしまう
ありがちな説明
「模倣行動に弱さがあるので、対人相互性を高めるプログラムを行います。」
言い換え例
「お友だちのまねっこがちょっと難しいので、一緒に遊ぶ楽しさを感じられる経験を重ねていきます」
→ 専門的に正しい言葉より、日常でイメージできる言葉の方が伝わります。「生活の中でどう役立つのか」を添えるのがポイントです。
② 方針だけを一方的に伝える
ありがちな説明
「今後は感覚統合理論に基づいて支援を行っていきます。」
言い換え例
「体の感じ方を整える練習をしています。これができると、遊びや活動に集中しやすくなります。」
→ 方針だけでは「なぜそれをするのか」が見えません。目的と生活へのつながりをセットで伝えると、保護者の理解が深まります。
③ 「できない理由」から話し始める
ありがちな説明
「まだ〇〇が苦手なようです」「この課題はまだ難しそうですね。」
言い換え例
「〇〇の場面では少し難しさがありますが、以前に比べて待つことができるようになっています。」
→ 苦手よりも変化から伝える。「伸びている部分」を一言添えるだけで、保護者の気持ちは前向きになります。
「納得されやすい伝え方の3ステップ」を実務に落とす
ステップ1:困りごとを一緒に確認する
保護者支援というと、「どう伝えるか」「どう教えるか」を考えがちですが、本当に大事なのは聞くことです。
最初の一言は、「〇〇さん、どんな場面で困ることが多いですか?」など、教えてくださいから始めると、信頼関係を構築しやすくなります。
ポイントは、「よく分かります!」を乱発しないことです。代わりに「そうだったんですね」「それは大変でしたね」と、気持ちを受け止める言葉を選ぶと、保護者の方はより自己開示してくれるようになります(それがまた情報となります)。
ステップ2:療育のゴールを生活の中に置き換えて伝える
動画でも紹介しましたが、専門用語をそのまま伝えるよりも、生活場面に置き換えると理解度が上がります。
| 専門的な表現 | 生活の言葉での言い換え |
|---|---|
| 他者とのコミュニケーション | お友だちと楽しく過ごせるように |
| 情動コントロール | 怒ったときに気持ちを切り替えられるように |
| 注意の持続 | 遊びを集中して続けられるように |
前に比べて、このような変化が見られた、という点は積極的に伝えるのがおすすめです。個別支援計画や専門的支援計画などでは、「長期目標」よりも、「この3か月で目に見える変化」を言葉にして伝えると生活がイメージしやすいと思います。
ステップ3:支援の意味と「今はやらないこと」をセットで伝える
「今これをやる理由」を説明する際に、あえて今はやらないこともセットで伝えると、保護者の方は安心します。
例:「今は人の話を聞く姿勢を育てている段階です。だからことばを増やす練習よりも、遊びながら順番を待つ経験を大切にしています。話す練習は、座って落ち着けるようになってから始める予定です。」
→ 「やっていない」ではなく「段階を踏んでいる」と伝われば、諦めましょうと言われているの?と誤解されることなく、見通しを持って関わってもらっているんだ、と受け止めてもらえます。
家庭と事業所の役割分担と、信頼関係づくり
私が動画の中で最も伝えたかったのはここです。
家庭は、子どもにとって「頑張る場所」ではなく「安心できる場所」です。
事業所では挑戦することをしても、家庭ではリラックスと安心する場。または甘える場。
この役割分担がうまくいくと、子どもはどちらの場面でも伸びていきます。
「おうちでは頑張ることよりもリラックスできる時間を大切にしてください。ここ(事業所)では、前向きになっていただけるような取り組みをしていきますね」
こんな風に伝えることで、保護者の方が「お家はトレーニングをする場所ではない」ということに気づくことにつながります。
保護者支援の中で伝え方に悩まれていた方は、ぜひご参考にしていただければと思います。
動画はこちらからご覧いただけます↓
