なぜ療育では保育士との連携が必要なのか|セラピストだけでは見えない子どもの姿

こんにちは。ゆず療育セラピスト塾 主宰の西村猛です。

私はこれまで理学療法士として、多くのお子さんの姿勢や運動発達、学習面のつまずきに関わってきました。

セラピストは、子どもの発達を専門的な視点から評価し、「なぜ困っているのか」を分析する専門職です。

姿勢や身体の使い方、感覚の特性、手先の操作、ことばの理解など、さまざまな視点から子どもを理解することができます。


しかし、療育の現場で経験を重ねる中で、私はあることを強く感じるようになりました。

それは、セラピストだけでは見えない子どもの姿があるということです。

今回は、なぜ療育に保育士との連携が必要なのかについて、私自身の経験も交えながらお伝えしたいと思います。

セラピストは「なぜ困っているのか」を見立てる専門家

療育の現場では、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)などのセラピストが活躍しています。

私たちの役割は、表面的な行動だけを見るのではなく、「なぜその困りごとが起きているのか」を考えることです。


例えば、鉛筆がうまく持てないお子さんがいた場合でも、単純に練習不足とは考えません。

姿勢の安定性、手指の操作性、感覚処理、注意機能、認知面など、さまざまな要因を評価しながら背景を探っていきます。


また、「じっと座れない」「先生の話が聞けない」「学習が定着しない」といった困りごとについても、その背景にある要因を整理し、お子さんに合った支援方法を考えることがセラピストの専門性です。

私は療育において、この「見立て」が非常に重要だと考えています。

しかし、評価場面だけでは見えないことがある

一方で、評価や個別療育の場面だけでは見えてこないこともあります。

例えば、個別療育では落ち着いて座り、指示も理解できるお子さんがいます。

評価だけを見ると、「座る力はある」「話を聞く力はある」と判断するかもしれません。

しかし園や学校では、「集団になると立ち歩いてしまう」「活動の切り替えが難しい」「周囲の刺激に気を取られてしまう」という様子が見られることがあります。


逆に、評価場面では緊張して力を発揮できなくても、友達との遊びの中では豊かなコミュニケーションを見せるお子さんもいます。


評価で見えるのは、あくまで「その条件下で見せている姿」です。

子どもは場面によって見せる姿が大きく変わります。

だからこそ、評価結果だけで子どもを理解したつもりにならないことが大切だと感じています。

保育士は「生活の中の子ども」を見ている

保育士さんと一緒に働くようになって、私が最も学んだことの一つは、「生活の中で子どもを見る視点」でした。

セラピストが関わる時間は、多くの場合30分から60分程度です。

一方で保育士は、自由遊び・集団活動・製作・給食・着替え・友達との関わりなど、一日のさまざまな場面を通して子どもを見ています。


そのため、「好きな活動なら集中できる」「集団になると困りやすい」「特定の友達とは安心して関われる」「活動前に不安が高まりやすい」といった、生活の中でしか見えない情報をたくさん持っています。


実際に私自身も、「指示理解は良好だ」と感じたお子さんについて、「少人数では大丈夫ですが、集団になると難しくなることがあります」という保育士の先生からの情報によって見方が変わった経験があります。


保育士が見ている情報は単なるエピソードではありません。その子の日常そのものです。

そして、その情報は見立ての精度を高める上で非常に重要になると感じています。

良い療育は「見立ての統合」

療育の現場では、多職種連携という言葉がよく使われます。

しかし私は、本当に大切なのは「見立ての統合」だと考えています。

理学療法士は身体を見ます。

作業療法士は感覚や生活動作を見ます。

言語聴覚士はことばやコミュニケーションを見ます。

保育士は生活場面や集団での様子を見ます。

保護者は家庭での姿を知っています。


それぞれが持っている情報は異なります。

だからこそ、一つの視点だけで子どもを理解しようとしないことが大切です。

個別療育で見せる姿も、その子ですし、園や学校で見せる姿も、その子です。

もちろん家庭で見せる姿も、その子です。

それらをつなぎ合わせていくことで、初めて子どもの全体像が見えてきます。


私は療育において、職種が違うことは強みだと考えています。それぞれの専門性を持ち寄り、子どもを多面的に理解すること。

それこそが、より良い支援につながるのではないでしょうか。